小沼さんは、東京都在住の文筆家である。ゲイであることを公言している。
「あとがき」に書かれている以下の文章には、小沼さんにとっての「日記を書くこと」の意味が記されている。
「日記を書くことは、日本で生きているゲイ男性の1人としての「アクティヴィズム」でもあった。その日の気分や政治への違和感や夕飯の献立を、ひとつのテキストの中で同時に語る。そうすることで、私はある属性が都合よく漂白されるのを拒み、ある属性だけに還元されることから逃れようとしていた。」(あとがきより)
この本の中に収められた3年間の日記では、特別なことは起きない。日々が淡々と、多少の怒りや戸惑いとともに綴られる。でも、自分には瞬間のように過ぎ去っていった気がする日の中で、小沼さんが考えていること、安心して生活していくために考えざるを得なかったことが日記の中にはある。
当たり前のように揺らがされ続けつつも、日記で描かれる日常での、恋人とのLINEや食事に関する会話がとても落ち着くというか、あたたかさを感じられる場面が多いのが魅力です。