批評家・福嶋亮大による新刊『メディアが人間である 21世紀のテクノロジーと実存』は、書籍情報サイト「リアルサウンド ブック」にて連載された福嶋亮大の論考「メディアが人間である」に大幅な加筆・修正を加えたもの。脳、人工知能、アート等も射程に収めつつ、マーシャル・マクルーハンのメディア論やジャン・ボードリヤールのシミュラークル論のアップデートを試みている。
前半では、20世紀を「映画の時代」(蓮實重彥)と見なす立場から、映画において顕在化した20世紀メディアの他者性が、21世紀メディアーーグーグル、AI、ソーシャルメディア、Instagramなどーーにおいていかに変質したかを論じている。メタメディアとしてのコンピュータ(アラン・ケイ、マノヴィッチ)、エントロピー増大に一時的に抗するサイバネティクス(ウィーナー)、鏡とシミュレーション(ディドロ、ボードリヤール)、言語ゲームと生活形式(ウィトゲンシュタイン)、労働の高密度化(マルクス)などの概念が議論の鍵となる。
後半では、前半で提示した理論の応用編として、戦争と承認、アイデンティティとキュレーション、身体と私、アニメと写真、不眠と記号、美学と羨望などの諸テーマを通じて、21世紀メディアをより具体的に分析するための道具が提示される。さらに、21世紀とはどのような時代であり、人間はそこでいかに生きるべきかという実存的な問題を考えるため、実存主義の先駆者キルケゴールについての論述で締めくくられる。
なお、同書は株式会社blueprintの評論/批評レーベル「Real Sound Collection」初のハードカバーとなり、装幀家の川名潤がブックデザインを手がけている。カバーイラストは、「EXPO 2025大阪・関西万博」のガスパビリオン「OBAKE WONDER LAND」のキャラクターなどで知られるEMUが描き下ろした。
同書の帯には、ゲームAI開発者の三宅陽一郎、宗教学者の柳澤田実が以下の推薦文を寄せている。
■ゲームAI開発者・三宅陽一郎
企業のメディアが地球を覆い、AIが世界を駆け巡っても、
存在への問いが消えてなくなるほど、人が仮想化されていない近未来。
そんな来るべき未来のための、まったく新しい実存的メディア論。
■宗教学者・柳澤田実
ウィルスと生成AIの流行。
作者は匿名化し、人は自分の美学化に余念がなく、
あらゆる関係性は水平化し、真理は多数化していく。
テクノロジーの彼方で、本書は21世紀の実存主義を創始する。