怖いのは旋律ではない。沈黙は幽霊を呼ぶ。
なぜ、あの音は怖いのか? 無調、反復、無音……ホラー映画にひそむ現代音楽の手法を解剖し、恐怖を鳴らす「音」の正体に迫る。
[目次]
序 実験的で大衆的な音楽
ミスター・ソフティーの呪い
ペニーワイズの子守唄
忘れられる音楽
恐怖の《表現》と《喚起》
《テラーの音楽》/《ホラーの音楽》/《音楽性の否定》
シェーファーの音景
第一部 テラーの音楽
第一章 驚愕する音楽
驚愕効果
スティンガー・コード
BRECVEMA
音楽的期待と『キャリー』
第二章 心臓の音
『ジキル博士とハイド氏』の音響
『サブスタンス』の生体音
『リング』のリズム変化
第三章 叫び
映画史上最も影響力のあるホラー音楽
耳障りな音と悲鳴
第四章 不協和音
不協和音とは何か
不協和音は怖いか
十二音技法の導入
『クワイエット・プレイス』の微分音
半音階的な和声進行/『ハロウィン』『悪魔の首飾り』
不安を与える地震速報
第五章 トーン・クラスター
発見された新たな語法
歴史的背景
リゲティとペンデレツキ
ノイズ音楽
第二部 ホラーの音楽
第一章 不安の音楽
テラーとホラー
テラーとアンザイエティー
ホラーの始まり/オルゴールと子守唄
畏怖の音楽
第二章 聴くと死ぬ旋律の系譜
死の旋律
映画のなかのディエス・イレ
第三章 テレグラフィング
ライトモチーフの弊害
『死霊館』のルーミングとショック
『イット・フォローズ』のテレグラフィング
ジャチント・シェルシのドローン
シェパード=リセ・グリッサンド
第四章 『シャイニング』を観ながら『ポリモルフィア』を聴く
第三部 音楽性の否定
第一章 怖くない音楽/嫌悪の逆転変調
なぜ怖くない音楽が怖いのか
非感情移入音楽
感情的一致と極性効果
嫌悪の逆転変調
音楽の無関心
オルゴールと子守唄、ふたたび
第二章 リミナルスペースの音景/夜のなかの夜
『アーカイブ81』
ダイエジェティックな恐怖
『バックルームズ』──リミナルスペースと憑在論
『8番出口』
ミスター・ソフティーの正体
聴覚の入れ子
リバース・リバーブ
第三章 音楽性の否定/ベッドシーツ
小林正樹『怪談』
否定の音楽/ベッドシーツ
黒沢清『回路』の非同期性
『リトル・ジョー』
第四章 無音の音楽➀ 沈黙は幽霊を呼ぶ
戻ってきた幽霊効果
『SKINAMARINK/スキナマリンク』
スクリーンから客席へ
ロマン・ポランスキー『反撥』
インフラサウンド
第五章 無音の音楽➁ 完全な真空
黒沢清『降霊 ~KOUREI~』
真空のような感覚
『ヘレディタリー/継承』の無音のスティンガー
第六章 控えめなまとめ
あとがき
音楽に関する用語
参考文献
註記
索引[映画・人名・事項]
[著者略歴]
木石 岳
(きいし・がく)
音楽家。山口県下関市生まれ。
エレクトロニカ・ユニットmacaroomで作詞作曲および編曲、プログラミングなどを担当。作曲家の川島素晴とともにジョン・ケージ演奏のプロジェクト『cage out』をリリース。音楽家の知久寿焼と共同プロジェクトで『kodomono odoriko』をリリース。国内外問わず多くの映画、ドラマ、ゲーム作品に楽曲提供している。主な著書に『はじめての〈脱〉音楽 やさしい現代音楽の作曲法』『歌詞のサウンドテクスチャー うたをめぐる音声詞学論考』がある。