特集テーマは「やわらかな聖なるもの――推し・宗教・陰謀の時代」。
「聖なるもの」は単に宗教や信仰だけにかかわる概念ではありません。日常に聖性を見出そうとするとき私たちはそれを詩として昇華しますし、閉塞した社会に聖なる救世主が現れると考えればそれは陰謀論につながります。また、好きなアイドルやライバーを「尊い」ものとしてあがめる目線は、推しを「聖なるもの」と見出す視線なのだと言えるでしょう。
こうした現代的な「聖なるもの」は、大いなる「父」のようにこちらを抑圧する、打倒すべき存在としてはあらわれません。むしろ、「母」的な癒着、「やわらかさ」として批判や攻撃をかわすでしょう。
私たちはいま問題にすべきは、大文字の聖性ではなく、日常に潜むやわらかな/小さな聖性であり、それをまなざす私たち自身の欲望なのです。