9つのアルファベットの組み合わせで宇宙を解読せんとした、天啓博士ルルスの結合術・記憶術。それは、イスラム思想やユダヤ神秘主義など多様な知が流入した13世紀カタロニアで醸成され、魔術的ルネサンス世界観へと繋がる一方、ベーコン、デカルト、ライプニッツなどの近代哲学者たちに多大な影響を及ぼすことになる。彼らは記憶術を必須の学問体系と捉え、推論や論理演算の基盤として取り込んでいく。人工記憶・百科全書構想・世界劇場・完全言語・記号法など、世界を記述し新しい発見を産みだす「普遍の鍵」=コードの〈術〉は、どのように発展していったのか。稀代の科学史家が追う驚異の思想的系譜。