SOLD OUT
柏書房のnoteでの連載記事を単行本化した1冊。
「なぜこの本が書かれなければならなかったのか」については、本書の「はじめに」を読むとよくわかる。どの分野であっても、常に周縁化され、おもしろおかしくだけ取り上げてきた歴史があり、それらは短歌の世界でも同様だ。それらに対して、稀代の批評家であり歌人であり、フェミニストである著者が光を向けるのは至極全うなことであり、彼女たちはそれをこそ待っていたのである。瀬戸夏子だから書ける本。
以下、「はじめに」からの引用です。
女性の短歌の歴史についての本を書いてほしい、と依頼されたときに、ほとんど反射的に不可能だ、と思った。近現代の短歌史の本をひらいたときに女性の名前が載っていない、とは言わない。けれど、その名前はしばしば、有名歌人の妻や娘、あるいは恋愛スキャンダルの対象、性愛や育児ばかりにフォーカスされた紹介、文学運動の端はしの存在、そんなふうに窮屈に押し込められ、言い訳のように時々連れ出され、そして気ままに放り出され締め出され、ふたたび男性たちの生き生きとした歴史が語られはじめる。仲違いやゴシップも含め、消費され、美化され、語られ、解釈しなおされつづける、ロマンあふれる男性歌人メインの歴史はいつでも魅力的だ。けれど疎外され、存在はするものの、点としてしか見られない女性歌人たちはそんなふうには語られてこなかった。たとえば与謝野晶子や俵万智、短歌史における突然変異の大スターのような女性ひとりひとりの話はできても、百年以上続く近現代短歌史のなかで他の女性歌人たちを大河のような歴史に巻き込むような語りはまだ成立しえない。ひとりひとりの紹介はできても歴史を紡ぐことはできない。そう思った。そう思っていた。
※「はじめに」は以下webサイトにて試し読み可能です。
https://note.com/kashiwashobho/n/n2f39994ff7c9?magazine_key=m3b8a1957d5aa