---以下、公式より引用----
本書は、スウェーデンのヨーテボリで行われた授賞式の模様を皮切りに、森山大道の写真の核心を探っていくものです。森山の写真は、街路で目にしたものをスナップショットするという単純な方法で撮られていながら、世界が異界に満ち満ちていることを見る者に突きつけます。
日々歩いて撮るというシンプルさと、それが生みだすイメージとの飛躍。
著者はこの2点に注目し、そこにドナルド・キーンが『百代の過客』のなかで指摘した日本の日記文学の伝統が息づいているのではないかと想像し、考えを進めていきます。
スナップショットは1950年代、カメラの小型化とともに広まりましたが、世界的には衰退する傾向にあるにもかかわらず、日本では森山大道をはじめとしてこれにこだわる写真家は多く、若い世代にも引き継がれています。
そこに平安時代以来の日記文学の伝統がかたちを変えて継承されているのではないか、という著者の指摘は、コロナ禍にあって日記が見直されているいま、さまざまな方向に考えが広がっていく可能性を秘めています。
また本書の文章は、旅紀行やエッセイや評論の要素を併せ持ちながらも、そのどれにも属さない独自のスタイルがありますが、これについて著者はつぎのように述べています。
「写真について書かれた本は、専門用語や思想書からの引用が多く、難解になりがちです。写真はだれでも撮れる身近なものにもかかわらず、それについて語ろうとするとどうして難しい文章になるのか、というのは長らく私の疑問でした。今回の本ではそれに挑戦し、写真の外に立って内部を観察しようと試みました。写真に関心のある人はもちろん、そうではない人にも自然に入り読み終えることができればうれしいです」